【 06年09月24日 】秋はキャンプに

9月に入り秋が訪れた。少し肌寒くなり、あっという間に冬が訪れるだろう。数年前までは秋になると必ずキャンプに出かけていた。それも過酷なキャンプ。少人数で場所も決めずに県外脱出し山に入る。

キャンプといえばキャンプ場を思い浮かべる人も多いだろう。自分のポリシーでは絶対にキャンプ場には行きたくない。最近のキャンプ場は軟弱すぎるからだ。車の駐車場のように仕切られた所に並べてテントを張り、近くには売店と水道、シャワールーム、おまけにテントの近くにはコンセントまで用意されている始末。日曜ともなるキャンプ場はテントで埋め尽くされ人ごみの中でのキャンプとなる。「こんなのキャンプじゃねーよ!」と思わずにはいられない。

秋のキャンプでのテーマは「前人未到 !」である。誰も入ったことない場所を探しテントを張る。これが痛快に面白い!&危険!である。山に入り場所を決めるだけで半日から丸一日かかることもある。おまけに秋なので台風にぶつかることもしばしばある。奥多摩に行った時には町で買い物をした時に地元の人に「今日は絶対、山に入っちゃダメだよ!」と言われ「わかりました。」と言いつつ、何のちゅうちょもなく「よし行くか!」と山に入る。自分でもあきれる性格だ。地元の人の言う通り、山は大荒れで道も崩れ、土砂崩れの連続で木がなぎ倒されて前にすすまないことも多かった。ある時は林道を100mバックするはめになったり、どしゃぶりの雨の中倒れた木をどけるために車から降りて木を持ち上げる場面もあった。真夜中に場所を決めテントを張り終えたころにはヘトヘトになるのだった。

実は奥多摩は前の年の冬に来たことがあった。


その時は雪が降っていた。車は4WDのキャンピングカーであったがチェーンも持たずに山に入り大変なことになった。しかも途中でワイパーが壊れてしまい視界も最悪の中、前人未到の地を探しあてた。雪は50cmも積もり山中に閉じ込められた。昼ごろに、その雪の中で釣りをするために2kmぐらい離れたところに歩いて出かけた。雪のために歩くことが困難であり予想以上に時間がかかり、釣りを終えた時には夕方になっていた。「しまった!」大変なミスをおかしたことに気づいた瞬間である。キャンピングカーに戻るには行きよりも体力、雪の量から言って多くの時間がかかる。

「日が沈む、夜が来る!」大変なことになった…。」

なぜなら懐中電灯などの明かりを持ってきていないのだ!

もちろん街灯などなく、夜になれば闇である。このまま雪の中で遭難すれば間違えなく死ぬ。視界が無い中、キャンピングカーに戻ることは不可能である。

「急いで帰るぞ!」


と声をかけ、のんきに釣りをしている仲間に、さらに

「説明してる暇はねー!とにかく急いで出発だ!」


2kmの距離を雪が降り積もる中、全力で走った。あたりは段々と暗くなる。恐怖と体力の限界が近づいてきた時、キャンピングカーが見えた。「助かった!」と思い仲間と笑顔を取り戻した瞬間、またしても信じられないことが起こった…。


目の前に映った光景は…黒いかたまりがうごめいているのだ。前人未到ということで物を盗まれる心配はない。食糧などは全て出しっぱなし。雪も降っているので外に出しておいた方が保存もきく。それが失敗であった。

カラスの群れだ!

食糧の70%はやられてしまったのだ!飛び立つカラスの足には肉やら野菜やらが握られていた。残った食糧もほとんどくちばしでつっつかれていた。無事なのは缶詰類だけ。くたくたでたどり着いた後の悲惨な状況。帰ろうにもすでにキャンピングカーは雪にうずもれていた。気づくとガソリンも少ない。いったいこの先どうすれば…。



話を元に戻すと、こんなデンジャラスな奥多摩が気に入り、翌年の秋にまた同じ所に向かったのである。しかし冬に来た時の場所にはたどり着けなかった。なぜなら前人未到の地は適当に山道を走り無茶してたどり着く場所なので、どのように進んできたかまったく覚えていないからだ。

あの冬の幻の場所はその後も数回探したがいまだに発見できていない。

人は一年に一度は生死をかけた体験をした方が良い。生きている実感を取り戻せるし、勇気を持てるからだ。
その他にも危険だったキャンプの経験は腐るほどある。
それはまた違う機会に語りたいと思う。

キャンプというのは危険ばかりでは無い。ワイワイ楽しい安全なキャンプも大好きである。むしろ初心者を連れて安全な場所でキャンプする方が多いのである。

危険なキャンプは限られた人数、死ぬ覚悟ができている勇敢な仲間に限られる。最近はみんな結婚してしまった仲間ばかりでこのような機会が減ってしまった。

なんとも寂しい…。俺も、もう落ち着いて結婚でもしたいところだが、こんなむちゃくちゃな人間と一緒になってくれる女性はこの世にはいないのかもしれない。と思う今年の秋である…。