【 07年06月03日 】ちょっと痛い話

それは突然やってきた。後頭部に鈍い痛み…。

バシュ!!

「うっ!」


それは私が高校三年生の6月のある日曜日。車の免許をとったばかりの友人と3人で河口湖に釣りに行った。電気屋の息子である友人の小さなワゴンタイプの軽自動車。無線マニアであったその友人は車にも無線を積んでいるちょっとイカした車に乗っていた。

高速道路を走り、いざ河口湖へ!!

暗いうちに出発し、夜明け頃に到着した。日曜日ということもあり釣り人は沢山いた。湖の桟橋からルアー(疑似餌)を投げて、数匹のブラックバスをキャッチした。

太陽が真上に移動したころには魚の食いも悪く、全然釣れない状態になった。ひたすらルアーを投げてみるが反応がない。段々とダラけてきて、

『誰が一番遠くにルアーを飛ばせるか大会』

になってきた。釣り歴の長い私は他の2人に負けることはなかった。そこで隣にいた友人が

友人「これなら負けないぜ!!」

と、とんでもなく『でかいルアー』をセレクトした。
遠くに飛ばすには『重いルアー』が有利になるので友人は自分の持っているルアーで一番でかい物を選んだわけだ。

その『でかいルアー』はとても魚が釣れるとは思えないような大きさで、針もかなり大きい物が付いている。

「クジラでも釣るのかよ!おい!」と突っ込みたくなるような代物である。

そして大きく降りかぶって松井秀喜のフルスイングのような豪快さで釣り竿を振り抜いた。

「痛い!!何事だ??」

なんとも鈍い痛みと衝撃が頭に襲ってきた!!

そう、冒頭で書いた現象は、まさにこの瞬間である。

友人が湖の遠くに飛ばすはずだったルアーが、ものすごい勢いで私の頭に直撃したのであった。後頭部を手で触るとあの『でかいルアー』が頭の後ろの延髄にぶらさがっているのを確認した。

一瞬、めまいがした。延髄はマズイっしょ!だって神経が集まってる場所ですから…。

友人「あわわわ…。」

あきらかに狼狽している。さっきまでハイテンションだった友人はドラマで愛人を殺してしまったサラリーマンのように脅えている…。

もう一人の友人も駆け付け、状況を把握したようだ。その友人もガクブル状態で茫然としている。

私は意外に冷静であった。思ったほど痛みも感じないし、後頭部なのでキズ口も見えなかったからだ。

そこで私はペンチを取り出し、その『でかいルアー』の針をはさみ、思いっきり後ろに引っ張ってみた。

AXE「ムァーーーー!」

びくともしない。針の返しまでグッサリと深く刺さっているようだ。

そこで今度は荷物からナイフを取り出した。これで皮膚を切り裂いて針を抜こうとしたが、さすがに自分では見えないのでオぺができない…。

AXE「おい、このナイフで頭切ってくれ!!」

と友人にナイフを渡す。ところが友人は

友人「無理だよ…そんなの無理だよ…僕には無理だよ…。」

ナイフを片手に子犬のようにブルブル震えてやがる。

「無理だよ…」「大丈夫…?」「ごめんね…。」と、言葉を覚えたキュウカンチョウのように同じ言葉を連呼している。

しょうがないと、もう一人の友人に頼んでみるが反応は同じであった。

AXE「どいつもこいつも!!しっかりしてくれよ!!」と言いたかったが…。

さてどうするか。痛みも段々感じるようになってきた。

友人「病院へ行こう!!」
友人「そうだ!病院へ行こう!」


と友人が息を吹き返したように、わめき始めた。

AXE「ヤダ!!病院キライ!!」

病院嫌いであった私は、まるで甘やかされたアホな子供が親せきに預けられるのが嫌だと言わんばかりに首を横に振って拒否をした。

2人の友人は私の両腕をつかみ車へと連れこんだ。さすがに抵抗もできず、後部座席に拉致されたかのように座らされた。

ところが今日は日曜日。しかも場所はド田舎の山梨県。当時は携帯電話もないし、カーナビもなかった。

病院がない。あっても日曜日でやっていない。この頃は携帯も無いし、カーナビも無い。公衆電話すらない。車で走り回るが病院は発見できない。免許取りたての友人が病院を探し出せるわけもない。

そこで友人が思いついたのは…

無線である。

『よっ!さすが電気屋の息子!!』と言う余裕もないぐらい痛みが増してきた。ちょっと意識がクラクラしてきた。

友人「テス、テス、テス、どなたかこの辺で本日やっている病院を知っている方、コールお願いします。オーバー。」

なにやら適当に呼び掛け始めた。

「ザーザー…。」応答なし。

痛い、とてつもなく痛くなってきた!!!

友人「どなたか病院を…」

友人はマイクに呼び掛け続ける。



「受信しました。現在地をどうぞ。」

キターーーーー!!応答が来ましたよ。

「次の信号を右です…オーバー。」

どうやら地元の無線マニアが電波をキャッチしてくれたようだ。無線の内容を信じ、友人はハンドルを切る。既に1時間ぐらい経ったであろうか。ついに病院に到着。

イヤイヤ病院の中に入る。病院慣れしていない私は緊張した面持ちで待合室に入る。事情を聞いてきた看護婦さんに笑われるしまつ。

麻酔を打ってペンチで強引に

ブチッ!!と引き抜いた。

血がダラーッと首筋に流れ落ちてきた。

何が痛いって、麻酔の注射を頭にすることが激痛ですよ。そう考えると

「麻酔って意味ないじゃーん。」

と病院初心者の感想でした。



みなさんもくれぐれも気を付けましょう……麻酔には。(笑)