【 07年06月17日 】仏果山に登る

突然沸いた登山計画。

磐梯山に登りたい!

川筋店長が似合わないことを口走った。磐梯山とは福島県にある有名な山である。私も小学生の時、登ったことがあるが、レベル的には初級の行程。

有名な山ではあるが、わざわざ福島県まで行って初心者がすんなり登れるかどうかは疑問なので、

「まずは近場の山で経験値積んだほうがいいんじゃないか?」

ということになり丹沢連峰の『仏果山』に登ることになった。

メンバーは菊池店長を含めた3人。仏果山も初級の行程であり、危険が少ない山ではあるが30歳を越えた初心者の2人にはキツイ思いをするであろうと忠告したが

しかし2人は

「余裕でしょう。初級コースですよね?」
「750メートルしかないんですよね?」


もうね、失笑するぐらい山をなめてるわけですよ。

それでも登山計画書を作り必要な物を用意させ、いざ出発!!

当日は曇り空。菊池店長が朝マックなんかしていて集合時間で既に25分押している。菊池店長の車で宮ヶ瀬方面に向かう。車中では山に対する思いを語り楽しげな空気。

「山に登ると何かが変わるかも。」的なことを川筋店長が語り出す。確かに私は山に登り、「何かが変わった」人間である。


「仏果山て、あれぐらいの高さですか?」

窓からは150メートルぐらいのちっぽけな山が見えている。

「は〜ぁ?あんなに低いわけないじゃん!」
「え〜っ!?もっと高いんですか?」
「あったりめ〜じゃん!!750メートルだぞ!」

そのうちに目的である仏果山が前方に見えた。

「あれが仏果山だよ。」
「まじっすか!!高すぎますよ!!あれを登るんですか??」

まるでエベレストに挑むかのようなセリフ。この場に及んで、まだなめている2人。ここで小一時間説教をしたいところだが、ほどなくして登山道入り口に到着する。

準備を整えて登山開始。2人は遠足の小学生のようにはしゃいでいる。登る前に記念写真を撮りウキウキである。川筋店長、菊池店長、私の順番で列を組む。階段を登り山道に入る。遭難防止の緊急連絡ポストを過ぎたあたりから道は急勾配な登りへと変化した。

ここで2人の顔色が変わる。

「イメージと違うやん…。」
「登ってるやん…。」
「ハイキングじゃないの…。」
「ホントに山道やん…。」


まだ入り口から50メートルぐらいしか進んでない。2人は完全に山をなめていたことに、やっと気がついたようだ。

早くも15分で休憩。後から来た中年のおじさんに追い抜かれる。水を飲み、チョコなどを口にする。

あたりは杉の木に覆われていて、どれぐらい登ったのか分からない状態。ひたすら急勾配な道が続く。

左手に崖がある道を通る時、おもむろに菊池店長のザックを左側に押してみる。

「ワァーーー!!やめてくださいよ!!!」

それからは、後ろをチラチラと気にしながら足を動かす菊池店長。

川筋店長が

「菊池、気をつけろよ!」

とフリを出すので、しょうがないから、そのたびに菊池店長を崖側に押してみる。そのたびに菊池店長が叫ぶんですよ。

「シャレになりませんよ!!怖いわこの人…。小野さんの前を歩くのはいやです!」

「何言ってんだよ!!菊池が本当に落ちそうになった時助けられるのは俺だけだぞ!!」




とスリルを提供していると、菊池店長が

「小野さん、ヤマヒルです!!助けてください!!」

ヤマヒルとは山に生息するヒルであり、人間にそおっと取りつき、血を吸う生物である。噛まれると血だらけになってしまう。登る前に「ヤマヒルに注意しろよ。」と伝えておいたのだが…。

見ると菊池店長の靴に8cmぐらいのヤマヒルがウネウネと吸いついている。急いで手で払いのけてやった。気がつかなければ靴の中に侵入されていたであろう。

それから菊池店長は後ろではなく足元チラチラと確認しながら登るようになった。

会話も少ないまま登る。2人の疲労が多少みえるが確実に頂上に近づいている。

『宮ヶ瀬越』という尾根に出る。

景色も良い。2人はその景色を見て、やっと山を登っているという実感をつかむ。

川筋店長が

「やったーーーー!やりましたよ!!」

とガッツポーズをプラトーンばりに繰り出す。

「いやいや、まだ頂上ではないから…。」




興奮を冷まさせ、記念写真。ここから左に進んで『高取山』を目指す。高取山まではあと10分ぐらいの行程。


尾根に出れば楽な道のり。しばらく歩くと、足元に『蛇』を発見。全長は60cmぐらいのカラフルな蛇。しかし、今まで見たことがない。後日、調べてみると『ジムグリ』という蛇で、普段は地面に潜っていることが多く、滅多に見られない蛇だとわかった。

菊池店長に蛇を持たせてカメラを向ける。川筋店長は「無理っす…」と拒否る。

高松山に登頂成功!展望台があり眺めは最高!宮ヶ瀬ダムが一望できる。しばし休憩をとる。

これから仏果山に向かうわけだが、仏果山の山頂を見て

AXE「ガスってるなぁ…しかも黒いガスが。」
川筋店長「ブラックガスですねぇ。」
AXE「そんな言い方しないけどね。」
川筋店長「ブラックっすね〜。」

急いで仏果山に向かう。宮ヶ瀬越に戻り、そこから反対方向へと向かうが、ここからは岩場の急勾配な道でロープを手繰りながら登る。そこを抜けるとあっという間に山頂に到着!!展望台に登り記念撮影。そのあと食事を作る。今日のメニューは串カツカレーにチャイのお茶とデザートにスイカだ。ご飯を炊いてカレーを温める。

食材が無くなったので荷物がだいぶ軽くなる。そして下山に入る。下山は体力は使わないが足にかかる負担は大きくなるのと、事故の危険性が増すものだ。2人に注意を促し

AXE「下りは俺が先頭に行くわ。」

2人「え〜〜っ!!!」

ということでいきなりトップギアでGO!!

と、後ろを振り向くと2人が着いてきていない。特に川筋店長が遅れ始める。口がすっぱくなるほど「靴は買って来い!!」と言ったのに、なめくさってスニーカーで来たものだから滑って転倒をしている。

川筋店長が先頭になるが菊池店長が暴走を始め、川筋店長を追い越して、ひとり独走する。

菊池店長が気になるので私は山道を使わずにまっすぐに垂直に山を下った。野人となり道を使わず急斜面を無理やり突っ走った。

遠く離れていた菊池店長にすぐに追い付き川筋店長を待つことに。

AXE「川筋ーーーー!」


叫んでみるが反応が無い…。今度は指笛で呼んでみる。

「Peeeeeeee!!!」

遠くのほうで「はーーーい。」とやっと声がした。

川筋店長「返事する余裕もないですよ…。」

出口はもうすぐ。休憩も少なく足を進める。

無事に下山。それから温泉を探し、汗を流し帰宅した。

2人とも
「いゃ〜山をなめてましたわ…」としみじみ語る。

久しぶりの登山。命の洗濯をした気分だ。危険なことはなかったが低い山でも山は山。2人とも初心者の割に良いペースで登れたのではないか。

はたして2人は「何かが変わった!」のであろうか?

これからまた体を登山用の体に作り変えようと思う。