【 07年07月22日 】タイフーン後編

雨と風が尋常じゃないくらい強くなっている。しばらくしてテントを出ると大変なことに気がついた!!

テントは川から2mぐらいの段差がある場所に建てていたのだが、既に水位が上がり、テントギリギリの所まで水が迫っていた!!

「まずい、これはまずい!!」

急いでテントに戻り、3人をたたき起こした。

「おいっ!!起きろ!!寝てる場合じゃないぞ!!」

ところが、よほど疲れていたのか、死んだように寝ていてまったく起きない!起きてもすぐに寝てしまう。この状況を理解できないのか!?危険察知能力が低いと人間は、このような時に死んでしまうことを実感した。

もう3人はあてにできないので1人でなんとかするしかない!!テントを出ると、また大変なことに気がついた!!






「テントが傾いている!!」






強風でテントの支柱がひしゃげて曲がってしまっていて、このままでは倒壊するか、テントごと飛ばされてしまう!!

急いで車に戻り、ザイル(ロープ)を取り出し、大きな石をいくつも運び、石にロープをくくりつけテントを固定する。車とテントもザイルで固定した。車に入り、ラジオを付けてみるがほとんど入らないのだが、それでも天気予報に耳を傾ける。

突風が来るたびにテントに駆けより手でテントを支える。雨はバケツをひっくり返したように降っていて、風は立っているのがやっとの状態だ。雨具もつけずに動き回り、全身ずぶ濡れ状態。

時折、川の水位を見に行くが、さほど水位は増していないのが不幸中の幸いである。崖の方は土砂と石が落ちてきているが注意していれば大丈夫だ。

体も冷え切り、体力の限界が近づいている。テントを支える手も力が入らなくなってくる。前の日も徹夜だし、昼間は活動しまくっていたので当然である。

しかし、心は折れなかった。3人の命を守ることが重要だし、このまま逃げるわけにはいかない。

力を振り絞りテントを支えるが、呼吸ができないほど雨と風が全身を襲う。その状態で数時間が経過し、気が遠くなる程のつらさが心を襲う。

耐えがたい状況を乗り越え、東の空がうす明るくなってきたことに気づいた。雨風もだいぶ弱まってきたので、川を見に行くと昨日まで透き通るような透明度であった水が、まっ茶色な濁流に変わり、音を立てて流れていた。空を見上げるとありえないぐらいのスピードで雲が流れている。

「助かった…。耐え抜いた…。」

完全に夜が明けた。雨もやみ、風も、そよ風に変わった。イスに座り、コーヒーを入れて一服。

しかし、まだ終わってはいない。これは台風の目に入っただけだ。次の嵐が来る前に撤退しなければならない。

「フゥ〜。疲れた…。」

そうしているうちに3人が起きてきた。

そこで一人が衝撃的なセリフを吐いた。




「おはようございます。夜は小野さんがうるさくて寝れませんでしたよぉ…。」






私「ななっなんだとーーー!!この状況を見ろよ!!このテント、川、崖をよく見てみろ!!誰のおかげで今、生きてると思ってるんだよ!!ふざけんな!!」







そういわれて辺りを見回す3人。やっと昨晩の死闘を理解した様子。 

「すいませんでした…」

ありえない。もう空気読める、読めないの問題じゃない。どこをどう考えたらあんなセリフが出るのか…。こいつらほっといて逃げ出せば良かったと本心から思いましたよ。

もう怒る元気もなく、あきれましたね。

それから朝食もとらずに急いでテントをたたみ、帰宅の準備をした。テントは支柱が折れて二度と使えないようになってしまっていた。

帰りの車の中で私は運転を頼み、爆睡したのは言うまでもない…。

台風は本当に恐ろしいものです。自然の脅威はナメてはいけない。夏秋のキャンプは天気が重要なファクターであるのです。


いつの日か『隕石でできた池』を見つけてやるぞぉ…。