【 07年08月12日 】火だるま

数年前の夏のできごと。

アウトドアチーム『TEAM AXE』の恒例行事として3泊4日のキャンプを遂行した。延べ人数40人ぐらいの大規模なキャンプを中津川で行ったのだが、色々な思い出がある。

中津川に着いてテントを張り、落ち着いたところで中津川を観察してみると、釣り人が沢山いることに気がついた。どうやらニジマスを釣っている様子であるが、まったく釣れていない

「なんだ釣れないんだなぁ。」

と思いつつも釣り道具を準備して遊び半分で腰の当たりまである水位のある川に入り釣り糸を垂れる。

ピクン!

いきなり魚の反応があり、大きくしなる釣り竿の先に大きなニジマスが現れる。

「なんだ釣れるじゃん。」

たまたま釣れたということもある。しかしその後もまた

ピクン!

「うっひょー!なんだこれ。入れ食いじゃん!!」


次々とニジマスが釣れる。既に10匹以上連続で釣れている。その間、周りにいる他の釣り人はまったく釣れていない様子。

「俺ってやっぱり釣りの天才だな。ふふふ。」

と自我自賛していると、なにやら岸の方で拍手が聞こえる。どうやら私に拍手している人が数名いるようだ。なんだか盛り上がっている様子だ。不振に思い川から上がり、その人達に近づいてみると、



「あなた凄いですね!!なんでそんなに釣れるんですか?朝からこの川を見ていて、釣り人が沢山いますけど誰も魚釣れてないんですよ。」



どうやらバーベキューをしているグループらしい。

AXE「やっぱりそうですか。みんなヘタなんじゃないですか?ハハハ。」

AXE「魚欲しいですか?よろしければ差し上げますよ。まだまだ釣れそうですし。」

「本当ですか!?欲しいです!!」

ということで釣れたニジマスを全部あげてしまった。そうしてまた川の中に入り、釣りを再開したのだが、相変わらず入れ食いは続き、次々とニジマスをキャッチしていった。

岸辺を振り向くと、先ほど魚を上げた人達がまた私を観察している。先ほどより人数も増え8人ぐらいがニジマスを焼きながらこちらを見ている。ニジマスがかかるたびに

「イエェーーーイ!!やったーー!!」

と拍手して大騒ぎしている。照れ臭いながらも釣りを続けて20匹以上をつり上げテントに引き上げる。

釣れた魚を調理することにした。

『ニジマスの薫製』である。薫製とは木の破片を燃やして煙を出し、その煙でニジマスをいぶして作る。『スモーク』とも言われる保存食に適した料理だ。

香ばしい香りと共に完成した薫製を先ほどのバーベキューしている連中に差し入れしに行った。

「うわ〜おいしそう!!なんですかこれ??」

AXE「薫製ですよ。良かったら食べてみてください。」

ということでテントに戻り、のんびりしていると先ほどの人がテントにやって来た。

「これどうぞ。」

とビールを大量に差し出してきた。丁重にお礼をした。

「薫製はどうやって作るんですか?」

という質問をしてきたので、ちょうど作りかけの薫製があったので具体的に作り方を説明してあげた。

「こんどキャンプに行きたいんですけど、どんなテントを買えば良いのですかねぇ。」

我々はタイプの違う、6個のテントを張っていたので、そのテントを見て質問をしてきた。

AXE「そうですね。テントを見せながら説明しますよ。」

「ちょっと待ってください!」

と、その人はその場を去っていった。

数分後、その人が戻ってくると、ぞろぞろと人を10人ぐらい連れて来たのだ。

「他のグループにも教えて欲しい人がいたので連れてきました!」

みんな私より年上の40代のおじさん達である。キャンプ術を覚えて家族でキャンプしたいという願望の人達のようだ。ちょっと不思議な空気の中、一つ一つテントを回り、説明を続ける。

AXE「えーと、このテントの特徴は…」

と丁寧に教えていく。中には手帳にメモをするおじさんもいるではないか。

AXE「何か質問はありますか?」

「ハーイ、ハーイ、ハーイ!」

とみんな積極的な人達である。質問に答えていくうちにテントの話からキャンプ全般の話になり、突然始まった見知らぬ人たち相手の『AXE流キャンプ講座』は無事に終わった。

AXE「はて?俺は何をしているんだろう?TEAM AXEのメンバーをほったらかしにして…。」

そして夜になり

『キャンプファイヤー』


をやることにした。明るいうち大量の木材を使い、木のヤグラを150cmの高さまでを組みあげた。

火を点火するのにはかなりの苦労が伴う。普通に火を放っても大きく燃えることはない。そこでガソリンを木にかけて点火することにしたのだ。

ジャバジャバとガソリンを振りかけ、いざ点火!!

『ボゥッ』という音ともに火が燃え上がる。周りで円になって見ているメンバーから歓声が上がる。

しかしまだ火の勢いは中途半端であり、盛大な炎にはなっていない。

そこで私はガソリンの入った缶を片手に火のついたヤグラに近づいた。そして炎に直接、ガソリンをそそいだ。

『ボウッッッ、メラメラ』

と火柱が私の目の前で高々と上がる。

AXE「イヤッホー!!」

とテンション上がり巻くりであったが、時折、ガソリンの缶の方まで火が引火してしまいそうになる。缶の中のガソリンに引火してしまったら大爆発を起こして腕ごとふっ飛んでしまうだろう。

あぶないと思ったらガソリン缶を遠くに投げる。そうすれば腕がふっ飛ぶ危険はなくなる。何度かそんなことを繰り返していた。そこで悲劇が起きてしまったのだ…。

ガソリン缶を投げた時にガソリンが私の体にかかってしまった!!

「ヤバイ!」と思った次の瞬間、炎が迫って来た!!

瞬く間に炎の襲撃を受け、全身が炎に包まれた!!


「キャーーーーーーー!」



というメンバーの悲鳴が上がる。それを冷静に聞いて、これは本当にヤバイということに気がついた。

猛烈な熱さが全身を襲う!!まさに火だるま状態!!

メンバーの誰かが助けてくれると思いきや、みんな腰を抜かして動けないでいるようだ。

ひとり、炎と戦う。川から離れている場所なので周りに水はない。川まで走ろうかとも思ったが、とても間に合わない。

地面を転がり、両手で払うように炎を消しまくる!!体毛が燃えて、すえた臭いが鼻をつく。

えらく長い時間に感じたが、本当は数十秒であろう。火は私の体から消滅した…。

砂まみれの体に力を入れ、立ち上がる。数カ所の火傷を確認した。すね毛などは全て無くなっていた。

あれほどの炎に包まれたのだが致命的な損傷は無かった。

その時、ちょうどビデオカメラを回していたメンバーがいたのだ!!決定的瞬間が収められているはず!!!





急いでビデオを巻き戻し再生してみるが…。

写っていたのは引火した瞬間だけ。その後はカメラを手にした奴がビビッて上下左右にぶれまくって、かんじんの私の姿はフレームアウトしてしまっている。音声はメンバーの悲鳴が鳴りやまないほど入っていた。

「燃え盛る炎ですら、我が肉体を燃やすことはできぬ…」

その後、何事もなかったようにキャンプファイヤーは楽しく行われた。

今の季節、花火、バーベキューなど火遊びには十分、気をつけましょう。

でも私にとって火は友達ですから…。